美少女の受難

…あたしは、人気のない道をあてもなくふらふらと歩いていた。
すっかり日がくれてあたりは真っ暗。
こんな田舎道には街灯もない。
このあたりは田園地帯なのだろうか。
カエルや虫の鳴き声しか聞こえない。

なんでこんなことになっちゃったんだろう。

子どもの頃はよかったな。
血はつながっていなくても、あいつとは普通に仲良くできてたのに。

あたしが10歳を過ぎたころから、あいつのわたしを見る目が明らかに変わった。
思い出したくもない。
あのまとわりつくようにねちっこい、下品で不気味な視線。

あるとき、あいつがあたしを手篭めにするために周到な準備を進めていることを知った。
もう限界だったあたしは、遠くへ逃げることにした。

でも逃げるって言っても、一体どこに逃げたらいいんだろう。

親戚とか友達の当てもない。
下手に公的機関に駆け込んで、またあの家に連れ戻されたりしたらたまらない。
あいつ外面だけはいいから、虐待をごまかすのなんてお手のものだろう。

あたしはひたすら、目の前の道を歩き続けることしかできなかった。

もうどれくらい歩いたか、わからない。
お腹がすいて、のども乾いて、足はくたくた。
もうくたびれ果てて、目が回りそう。

…あたしは行き倒れていたらしい。

気がつくと、知らない部屋の中で汚れたベッドに寝かされていた。

中年のみすぼらしい身なりの男が数人、あたしを取り囲んで覗き込んでいる。

あたしが目を開いたのに気づくと、男達はにたりと笑みを浮かべた。

やばい。
直感的に危険を感じたあたしは、すぐに起き上がって部屋から逃げようとした。
けれど身体が思うように動いてくれない。
何か盛られた?

男達のひとりが、どこかうきうきとした奇妙な声色で言った。

「ダメだよぉ、まだ寝てなきゃ。
疲れてるんでしょお?」

ぞっとした。
せっかくあいつのもとから逃げたのに、なんでまたこんな目に遭わなくちゃいけないの?

…男達がにやにやとあたしを舐め回すように眺めている。
やめて。
そんな目で見ないで。
必死に起き上がろうとしたけれど、その努力もむなしくあたしの意識はまた深い闇の中に沈んでいった…


それからしばらくして、少女の遺体が発見された。
彼女の死因は何だったのだろうか。
19年08月19日 23:20 [マママ]
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